【論考】 体育と英語


 

「体育」と「英語」

 

今回はこのふたつの教科のインターフェイス(境界線)について考えてみたいと思います。

 

English PE

「体育」と「英語」。一見、水と油のような関係です。

私の尊敬する体育の先生が、次のようなことを考えています。

 

English P.E. (英語で体育をやっちゃおう!)

 

現在、その方はEnglish P.E.(P.E.というのはPhysical Educationつまり「体育」のことです)というクラスで使用するテキストを執筆しており、私にその制作過程を話してれました。陸上競技が専門の先生が考えているEnglish P.E.というクラスは、「英語での指示を通して学生に身体を動かせ、フィジカル面の能力と英語の能力を両方高めてしまおう」というものです。

 

 

言葉と動きの連動

例えば、教員が

 

Knee and elbow!

 

と叫んだら、「右肘を左膝にタッチさせなければならない」というルールを学生に課します。

 

また、学生を2人1組にして、教員が

 

Over!

 

と叫んだら、「ひとりが馬跳び台を作り、もうひとりが馬跳びをしなければならない」といったようなルールも課します。また、

 

Under!!

 

と叫んだら、「ひとりが両足を開き、もうひとりが足の間にできたトンネルをくぐらなければならない」というルールを課します。

 

こうしたルールを事前にいくつか教えておきます。個人やチームで競わせてやると、「指示」から「行動」にかかる時間をできるだけ縮めようと努力をするようになります。しばらくの間続けていると身体にもかなりの負荷がかかるので身体が鍛えられていきます。

 

 

学生の意識

大勢の前で一斉に身体を動かさなければならないわけですから、一人だけできなかったら目立ってしまいます。普通はそんな風に目立ちたくないと思いますから、夢中になって頑張ります。

 

先生が叫んだ英語の指示がわからなくても、先生や一緒にやっている仲間の動きを見たりしながらついていこうとします。すると、最終的にはこんなセリフを聞くことができます。

 

「ああ、kneeっていうのは膝のことか」

「ああ、なるほど。そういうことね〜」

 

要するに、自然な状態で「学び」と「理解」が生じるわけです。

 

最高の視覚メディア

体育という授業は、「お手本」という最高の視覚メディアを活用することができます。また、教師が学生に指示を出す時は、身振り手振りを使いながら指示を出すこともできます。

 

目標の動きを達成させるためには、言葉だけで指示することもできますし、また理解度が低い場合は、こうした身振り手振りでヒントを与えながら説明することもできます。

 

「お手本」という最高の視覚メディアのおかげで言葉のみの説明から生じる理解不足は解消できるというのが、体育が英語と相性がいいと思う理由です。英語自体の意味を理解させるのに使用できる媒体が2つ(言葉と身振り手振り)もあり非常に心強いのです。

 

 

まとめ

幼児英語教育でよく使われる歌があります。

 

Heads, shoulders, knees and toes, knees and toes

 

音楽に合わせて「頭、肩、膝、つま先、膝、つま先」といった要領で、両手で身体の部位をタッチする、おなじみの「まなびうた」です。

English PEの授業は、こうした幼児英語教育の発想をもとにしているようです。単語や表現を記憶するのに必要なものは、次のようなものが考えられます。

 

①音声の印象(言語的手がかり)

②使われる場面(経験的手がかり)

 

①は言語の形式的な面から得られる手がかりで、大抵の場合人間は言語の音声面から得られる印象を記憶の手がかりとしている場合が多いです(まれにつづり字の視覚的な印象のほうをより重視する人もいます)。

 

②は、単語や表現は場面と一体化して記憶されるということです。

 

「こういう場面でこの単語が出てきたなぁ」

 

といった具合で覚えている場合が多いのです。

提唱者の先生の授業を見て、すごいなぁと思うのが、学生の顔には最後まで笑顔が溢れていることです。きついトレーニングから生まれるネガティブな感情は、ゲーム的な要素から生まれるエンターテイメント性によってかき消されます。最後までトレーニングを楽しむことができるわけです。

 

こうしたことを考えるとEnglish PE は言語習得(特に語彙習得)という観点では非常に理にかなっていると言えます。僕ら英語教師が教室でやっている座学の授業には限界があるのかなぁ、とか少し考えてしまいました。


takeondo
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都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

2 Comments on 【論考】 体育と英語

  1. 合宿ではお世話になりました。また、興味持っていただき、このようなコメントもいただきありがとうございます! インターハイも終わり、テキストも完成に向かっています。教材の流れができたら、録音等ぜひご協力いただきたく思っています。よろしくお願いいたします!

    • 田邊先生
      合宿では大変お世話になりました。こちらこそコメントをいただきありがとうございます!

      テキストすごく楽しみです。私にできることでしたら遠慮なくご相談ください!

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